アフリカ大陸の玄関口として訪れたのがモロッコでした。カサブランカの港に降り立ち、限られた寄港時間の中で駆け抜けたあの日は、今も私の記憶の中で色鮮やかなスパイスの香りと共に息づいています。近年、SNSなどで「映える国」として注目を集めるモロッコですが、当時の私が肌で感じた現地の温度感や、友達と迷い込んだバザールの喧騒を、最新の現地の様子と比較しながら綴ります。
モロッコ ― 知っておきたい基礎知識
広さ
モロッコ王国の領土は、国際的に係争のある西サハラ地域を除いた領域であっても、約44万6,550平方キロメートルに及びます。日本の国土面積よりも一回り大きい広さです。
気候のポイント
一般的なモロッコの気候
モロッコの気候は北部や沿岸部が温暖な地中海性気候に属している一方、内陸部に進むにつれて乾燥した砂漠気候へと変化していく特徴を持っています。年間を通じて大西洋上に海洋性熱帯気団が居座っており、夏季にあたる時期は内陸の都市を中心に日中の平均最高気温が40度近くに達することも珍しくなく非常に乾燥します。
旅の舞台「カサブランカ」の気候
カサブランカの気候はケッペンの気候区分で地中海性気候(Csb)に属しており、大西洋の寒流の影響を受けるため非常に穏やかな気候となっています。7月の平均最高気温は25.0度前後で推移し、夏季はアゾレス高気圧に覆われるため降水量が極端に減少し非常に乾燥します。
(最新の情報は「モロッコ政府観光局 公式サイト」にてご確認ください)
「モロッコの人たちの日常に触れるツアー」を巡る旅
ジャマ・エル・フナ広場
あの日訪れた「ジャマ・エル・フナ」はマラケシュの旧市街の中心にあり、世界無形文化遺産にも登録されている広場です。遮るもののない強烈な太陽が照りつける空間には、大道芸人や物売りの姿が遠くに見え、異国感あふれる独特な雰囲気が漂っていました。

バヒア宮殿
静けさと美しさが同居していた「バヒア宮殿」は、精巧なアラベスク模様の彫刻や色鮮やかなタイルの中庭が特徴の19世紀後半の建造物です。強い日差しが白い壁やモザイクタイルに反射する光景が美しく、イスラム建築の意匠の美しさにじかに触れた瞬間でした。不鮮明な写真しか残っていませんが、ひんやりとした日陰を静かに歩いた感覚は、大切な記憶の1ページとしてしっかりと残っています。

マラケシュの歴史的な城壁
内陸の街、マラケシュの周囲を囲む赤土の城壁を見上げました。12世紀頃のムラービト朝時代に起源を持つこの壁は、街が「ピンクシティー」と呼ばれる理由にもなっているとされています。あの日目にした城壁は、乾いた大地の色と同化しながら延々と続く圧倒的なスケール感があり、強烈な太陽を浴びてじんわりと赤茶色に輝く姿から歴史の重みが無言で伝わってきました。

ハッサン2世モスク
カサブランカの海沿いに佇む「ハッサン2世モスク」ですが、手元には美しい夜景の写真が残っています。漆黒の闇にライトアップされて浮かび上がる巨大なミナレット(光塔)の美しさだけは非常に幻想的でした。大西洋に突き出すように建てられたこのモスクは、ミナレットの高さが世界最大級の約210メートルを誇るようです。

伝統的なティーセレモニーとティーポットの購入
モロッコの文化に深く浸ることができた、伝統的なティーセレモニーのひとときです。現地で「アツァイ」と呼ばれるミントティーを、高い位置からグラスに注ぎ入れる流れるような美しい所作は、まさに現地の人たちの日常を覗いているようでした。その際に使用されていたクラシカルな金属製ティーポットが素敵で購入しましたが、この異国感溢れる買い物の時間が旅の中で一番楽しかったです。
伝統料理 クスクス
モロッコを代表する伝統料理である「クスクス」です。デュラム小麦の粉から作られる小さな粒状の主食で、肉や野菜を煮込んだスープとともに深皿で供されるのが現地の庶民的なスタイルです。目の前に運ばれてきた一皿はスパイスの複雑な香りが立ち上り、口に運ぶたびに優しい食感と素朴で奥深い味わいが広がりました。

モロッコ国鉄
主要都市間を結ぶ「ONCF(モロッコ国鉄)」の列車です。当時は移動手段として実際に利用した形跡が残っているのですが、残念ながら車窓からの景色や、最終的にどの都市へと向かったのかという具体的な行き先の記憶が完全に抜け落ちてしまっています。ガタゴトと揺れる車内の座席の感触や、現地の人々が普通に乗り込んでくるのんびりとした空気感だけがおぼろげなすべてです。そんな曖昧さも自由な旅のリアルな姿として、そのままここに書き残しておきます。

「当時の通貨と、忘れられない記憶」
実に日本より大先輩!?2色の「5ディルハム」
外側が真鍮色で内側が銀色の5ディルハム硬貨は、1987年に導入されたバイカラー貨幣です。日本が現行の2色500円玉を導入したのは2021年のため、モロッコは30年以上も早くこの偽造防止技術を流通させていたことになります。当時はただ珍しい綺麗なコインだと思っていましたが、世界的に先進的な試みだったと知りました。

現地でも幻!?1円未満の「超レア端数コイン」
手元の「1/2」は50サンテーム硬貨を指し、「10、5、1」はさらに小さな補助単位です。当時お釣りとして財布に紛れ込みましたが、現地の物価上昇により日常生活ではすでにほぼ使われていない幻の存在でした。
財布に忍ぶアート!異国情緒あふれる「20ディルハム札」
手元にある20ディルハム紙幣の表面にはハッサン2世(ハサン2世)の肖像が描かれており、背景には世界最大級のモスクである「ハッサン2世モスク」の建物が描かれています。裏面には、ハッサン2世モスクの壁泉(ウォール・ファウンテン / 飾り噴水)が描かれています。モロッコの伝統的なタイルアート(ゼリージュ)や精巧な彫刻が施された美しい噴水のデザインで、表面のモスクの外観とあわせて、まさに一冊の建築美術書のような贅沢な仕上がりになっています。

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※この記事は20年以上前の体験をもとに構成しており、現在の正確な現地の状況については公式サイト等をご確認ください。
今回の訪問地:モロッコ

