太平洋に面した情熱のリゾート地アカプルコ。眩しい日差しが照りつける海岸線と、リングに響き渡る熱狂的な歓声は、今も私の記憶の中に鮮やかに残っています。今回は、現地で参加したルチャリブレ体験ツアーや、アカプルコ名物の断崖飛び込み、そして手元に残る少し変わった表記の硬貨を眺めながら、この国の尽きない魅力を綴ります。
メキシコ ― 知っておきたい基礎知識
広さ
メキシコ合衆国の国土面積は、約196万平方キロメートルとされています。これは日本の国土の約5倍に相当する広大な規模であり、北米大陸の南部に位置する非常に大きな面積を持つ国です。
気候のポイント
一般的な気候
メキシコの国土は広大で南北に長く、太平洋とメキシコ湾に挟まれているため、気候は実にバラエティに富んでいます。5月から10月にかけては雨季となり、夕方に激しいスコールが発生するのが特徴です。
寄港地の気候
旅の舞台であるアカプルコは熱帯サバナ気候に属しており、雨季と乾季が非常にはっきりと分かれている土地です。低地にあるため年間を通じて気温が高く、うだるような熱気と遮るもののない強烈な太陽が照りつける環境となっています。
(最新の情報は「メキシコ政府観光局 (Visit Mexico) 公式サイト」にてご確認ください)
アカプルコを巡る旅
ルチャリブレ体験ツアー
現地では、メキシコの伝統的なプロレス文化に触れるオプショナルツアーに参加しました。ウルティモ・ドラゴン氏が設立した日本人プロレスラー養成学校兼プロレス団体である「闘龍門」のメンバーとの交流を楽しむという、非常にユニークな企画です。当時はメキシコのプロレスに関する知識をそれほど持っていませんでしたが、レスラーの方々の気さくな対応や、じかに触れた現地の熱狂的な空気に圧倒されたことを覚えています。あの日を境にプロレスの魅力に引き込まれ、帰国後も東京の後楽園ホールへプロレス観戦に足を運ぶようになるなど、自分の趣味の世界が大きく広がるきっかけとなった素晴らしい体験でした。

路上市場(ティアンギス)
アカプルコの街中に広がる路上市場、通称「ティアンギス」にも足を運びました。現地の言葉で路上市場を意味するこの場所は、並べられている商品や行き交う人々の熱量に満ちており、観光地化されたリゾートホテル周辺とは異なる、メキシコの日常の息吹を強く実感する場所でした。手元の記録を振り返っても当時の移動ルートなどの詳細は曖昧ですが、並べられた色鮮やかな果物や、異国情緒あふれる独特の香りが混ざり合った空間に身を置いた記憶が、色褪せない思い出の1コマとして深く刻まれています。

ラ・ケブラーダの断崖
観光名所として名高い「ラ・ケブラーダ」の断崖絶壁を訪れました。ここは非常に高い崖であり、専属のダイバーが高さ数十メートルの岩場から狭い海面へと飛び込む伝統的なクリフダイビングが行われていることで世界的に知られています。当時は知らなかったのですが、調べてみると、かつて1960年代にエルビス・プレスリーが主演した映画の舞台にもなった場所だという事実がわかり、積年の謎が解けたような心地になりました。見上げるような巨岩と、そこに打ち付ける太平洋の荒波の光景は、あの日現地で見た自然の厳しさをそのまま伝えてくれます。
当時の通貨と、忘れられない記憶
手元に残る貨幣の記録と当時の価値
私の手元には、あの日現地で持ち帰った20ペソ紙幣1枚と、10ペソ、50、20センタボ、そして「N$」の刻印がある5、2、1ペソの硬貨が今も大切に保管されています。20ペソ紙幣には、先住民族出身の初のメキシコ大統領であるベニート・フアレスの肖像が描かれています。また、硬貨にはアステカの暦石といった古代アステカ文明の意匠があしらわれているのが大きな特徴です。何気なく使っていた小さなお金ですが、異なる金属を組み合わせたバイカラーの美しい鋳造技術など、メキシコの壮大な歴史のルーツが凝縮されています。
通貨の完全なる変遷と現在の歴史的価値
額面数字の前に「N$」と刻印された5、2、1ペソ硬貨は、激動の経済を証明する貴重な記録です。メキシコでは1980年代のハイパーインフレを経て、1993年に1,000旧ペソを1「ヌエボ・ペソ(新ペソ)」とするデノミネーションが実施されました。この「N$」表記の硬貨は1993年から1995年の数年間しか製造されておらず、1996年以降は「N」が消えた通常の「$」表記に戻っています。
メキシコ銀行の公式規定では、この「N$」硬貨は現在もお店などでそのまま使用可能です。しかし、長い歳月が流れ回収が進んだ今、現地の街中で見かける機会は滅多にない非常に珍しいデザインとなっています。また、フアレス肖像の20ペソ紙幣も近年は新シリーズへの刷新が進み、一世代前の旧紙幣は姿を消しつつあるようです。あの日、うだるような熱気のアカプルコで手の中にあったお金は、今や二度と手に入らない貴重な歴史の1ページとして、当時の記憶を静かに語り続けてくれています。

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※この記事は20年以上前の体験をもとに構成しており、現在の正確な現地の状況については公式サイト等をご確認ください。
今回の訪問地:メキシコ

