エルサルバドル体験記|消えゆく通貨と中米の情熱に出会った旅

20年以上前に行った、中米エルサルバドル共和国。そこは、瑞々しい熱帯の緑と、人々の温かな活気に満ちた国でした。中でも、太平洋を望むアカフトラの風や、首都サンサルバドルの荘厳な建築物の記憶は、今も私の心に鮮明に残っています。今回は、当時の旅の素材と最新の情報を照らし合わせながら、この国が歩んできた激動の歴史と、忘れられない味、そして手元に残る「失われた通貨」の物語を綴ります。

 


エルサルバドル ― 知っておきたい基礎知識

広さ

エルサルバドルの総面積は21,040平方キロメートルであり、これは日本の四国よりやや大きい程度の広さにあたります。

気候のポイント

一般的なエルサルバドルの気候

エルサルバドルは熱帯気候で、乾季と雨季が明確に分かれています。気温の季節変化はほとんどなく、主に標高によって決まります。5月から10月の雨季(インビエルノ)は年間降水量のほぼすべてが集中し、太平洋上の低気圧により午後に激しい雷雨が降ります。11月から4月の乾季(ベラノ)は北東貿易風の影響を受け、水分を失った空気が流れ込むため乾燥して暑く、もやがかかります。地域や標高によって気温は異なり、中央高原は年間平均23℃と穏やかですが、山岳地帯は年間平均12〜23℃と国内で最も涼しく、最低気温が氷点下近くになることもあります。

旅の舞台「アカフトラ」の気候

エルサルバドル国内の他の地域(中央高原や山岳地帯)が穏やかで涼しいのに対し、この沿岸低地エリアは「一様に高温多湿」なのが最大の特徴です。国内で「最も暑い地域」に分類されており、年間平均気温は25〜29℃(77.0〜84.2°F)に達します。

 

(最新の情報は「エルサルバドル観光局 (MITUR) 公式サイト」にてご確認ください)

(最新の観光情報は:観光プロモーションサイト「El Salvador Travel」

 


アカフトラとサンサルバドルを巡る旅

首都の歴史を象徴するメトロポリタン大聖堂と国立劇場

首都サンサルバドルへと足を運ぶと、そこにはこの国の歴史の重みを感じさせる壮麗な建築物が待っていました。

バリオス広場に面して立つその威容は、地震の多いこの国において、何度も崩壊と再建を繰り返してきた不屈の象徴でもあります。私が訪れた20年以上前も、その真っ白な外観と、内部に漂う静謐な空気は、訪れる人々を包み込むような優しさがありました。大聖堂の地下には、エルサルバドル内戦中に暗殺されたオスカル・ロメロ大司教が眠っており、信仰の場としてだけでなく、この国の苦難と希望を語り継ぐ場所としての重みを感じたことを覚えています。

20年以上前の世界一周クルーズで訪れた、エルサルバドルのメトロポリタン大聖堂の風景

続いて、歩いて3分〜4分程度の場所にある「エルサルバドル国立劇場(Teatro Nacional de El Salvador)」は、まさに中米屈指の華麗さを誇る場所でした。1917年に建設されたこの劇場は、フランスのルネサンス様式を取り入れており、内装の細やかな彫刻や豪華なシャンデリアは、かつてのこの国の繁栄を今に伝えています。20年以上前のあの日、劇場の前に立ち、その美しい柱を見上げた時の感動は今も色褪せません。現在、サンサルバドルの中心部は再開発が進み、国立劇場周辺もより観光客が歩きやすいエリアになっているそうですが、あの美しい建築物が刻んできた時間の深みは、再訪していない私にとって、永遠に変わることのない「歴史の風景」として記憶の中に存在し続けています。

20年以上前の世界一周クルーズで訪れた、エルサルバドルの国立劇場の風景

 

国民食「ププサ」との忘れられない出会い

エルサルバドルの旅を語る上で、絶対に欠かせないのが名物料理「ププサ(Pupusa)」です。

ププサは、トウモロコシの粉(マサ)で作った生地の中に、チーズ、豆(フリホレス)、豚肉(チチャロン)などの具材を包み、平たく成形して鉄板で焼き上げた伝統的な料理です。

一口食べると、外側はパリッと香ばしく、中はモチモチとした食感。そして中から溶け出した熱々のチーズと具材が絡み合い、素朴ながらも驚くほど奥深い味わいに感動しました。付け合わせの「クルト(キャベツの酢漬け)」と一緒にいくらでも食べられてしまうほど。現在のエルサルバドルでも、毎年11月には「ププサの日」が設けられるほど国民に愛され続けているそうです。当時の私が、現地の人々に混じって手づかみで頬張ったププサの味は、まさにエルサルバドルの優しさと情熱そのものでした。

20年以上前の世界一周クルーズで訪れた、エルサルバドルの伝統料理ププサの写真

 


当時の通貨と、忘れられない記憶

手に入れた直後に消滅!幻の通貨「コロン」

エルサルバドルでは長年「コロン」という通貨が使用されていましたが、2001年に米ドルを法定通貨とするドル化政策が導入されました。そのため、当時手に入れたコロンの紙幣や硬貨は、その後すぐに市場での流通が停止し、今となっては手元に残る貴重な幻の存在となっています。

同じ「5」なのに!サイズが全然違う大中小の謎

エルサルバドルの硬貨には、同じ「5」の数字が表記されていても、発行された年代や種類によって直径や厚みといったサイズが大きく異なるものが存在していました。当時、手元にある5コロン札とともに、1コロン硬貨、25、10、5、そして大きめの5と書かれた硬貨を見比べた際、その大きさの極端な違いに不思議な魅力を覚えたものです。

コロンからドル、そしてまさかの「ビットコイン」へ

エルサルバドルは2001年に法定通貨を米ドルへと完全に移行させましたが、さらに2021年には世界で初めて暗号資産であるビットコインを法定通貨に急遽追加しました。かつて流通していたコロンから米ドルへ、そして最先端のデジタル通貨へと法定通貨が移り変わっていく大胆な経済政策の変遷には、深い驚きを感じざるを得ません。

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※この記事は20年以上前の体験をもとに構成しており、現在の正確な現地の状況については公式サイト等をご確認ください。


今回の訪問地:エルサルバドル