朝起きてすぐ、枕元の眼鏡を探す。そんな習慣が当たり前だった頃のことを、ふと思い出すことがあります。視力が悪いことは、ずっと自分の一部のようなものでした。見える・見えないを調整しながら過ごす毎日。けれどある日、その前提を変える選択をしました。レーシック手術です。あれから15年が経ち、今はまた眼鏡のある生活に戻っています。それでも、あのときの決断と、その後の時間は、静かに自分の中に残っています。
見えにくさと過ごしてきた日々|レーシックを選んだ理由
視力が悪くなったのは、小学生の頃でした。黒板の文字がぼんやりしてきて、気づけば眼鏡をかける生活が始まっていました。最初は少し特別な気分もありましたが、次第にそれが当たり前になっていきます。
中学生になると部活動が始まり、眼鏡では不便を感じる場面が増えていきました。動くたびにずれたり、汗で曇ったりすることが気になり、思い切ってハードコンタクトレンズに変えました。視界がクリアになったときの感動は今でも覚えていますが、その一方で毎日のケアの手間は確実に増えました。
社会人になる頃にはソフトコンタクトレンズに変え、やがて2weekタイプの使い捨てへ。時代の流れとともに便利にはなっていきましたが、それでも「装着する」「外す」「洗う」という工程からは逃れられませんでした。
転機になったのは、結婚してからです。スポーツジムに通い始め、ほぼ毎日のようにプールに入る生活になりました。水の中ではコンタクトレンズが気になり、できれば裸眼で過ごしたいと思うようになりました。
そんなときに、夫の兄がレーシック手術を受けて数年経っていると聞きました。問題なく生活している様子を知り、「自分たちもできるのかもしれない」と思ったのがきっかけです。
当時はまだ今ほど選択肢が多くなく、レーシックが主流でした。少しの不安はありつつも、「裸眼で生活する」というシンプルな願いが、背中を押してくれました。夫と一緒に受けることを決め、大手の病院で手術を受けることにしました。
目的はとてもシンプルで、「見える生活を手に入れること」。それだけでした。
手術の流れと、その後の変化|15年の中で感じたこと
手術前にはいくつかの検査がありました。視力だけでなく、角膜の厚さや形状など細かくチェックされます。その結果をもとに、手術が可能かどうかが判断される流れでした。
当日は思っていたよりもスムーズで、待ち時間も含めて落ち着いた雰囲気の中で進んでいきました。手術自体は短時間で終わり、痛みもほとんどありませんでした。ただ、「見えているのに処置されている」という不思議な感覚は、少し印象に残っています。
手術が終わってすぐは、視界が少しぼやけていて、はっきりとは見えませんでした。説明を受けていた通り、乾燥や眩しさも感じます。特に夜になると、光がにじんで見える「ハロー・グレア現象」があり、最初のうちは少し気になりました。
それでも数日から数週間経つうちに、徐々に落ち着いていきました。視力も安定し、私の場合は1.0程度、夫は1.2くらいまで回復しました。
朝起きてすぐに見えること、コンタクトレンズを気にしなくていいこと。ひとつひとつは小さなことですが、積み重なると日常がずいぶん軽くなったように感じました。プールでも裸眼で過ごせるようになり、あのとき思い描いていた生活に近づいた実感がありました。
費用は夫婦で50万円ほど。当時としては大きな金額でしたが、「毎日の快適さ」を考えると納得できるものでした。
その後の10年間は、ほとんどストレスなく裸眼で生活できていました。視力のことを意識する場面が減り、「見えること」が特別ではなくなっていきます。
ただ、10年を過ぎたあたりから、少しずつ見え方に変化を感じるようになりました。遠くがほんのりぼやける感覚があり、「あれ?」と思うことが増えていきます。
数年前には眼鏡を使うようになり、今では再び眼鏡のある生活です。さらに老眼も加わり、以前とはまた違った見え方になっています。
一方で、夫は15年経った今でも裸眼で生活しています。同じタイミングで同じ手術を受けても、結果には差が出るものなのだと実感しました。個人差という言葉の意味を、こうして体験として理解した気がします。
15年経って思うこと|後悔しない選び方とこれから
レーシックを受けたことについて、「後悔しているか」と聞かれたら、答えは「していない」です。
たしかに今は再び眼鏡を使っていますが、それまでの10年以上、裸眼で過ごせた時間はとても快適でした。コンタクトレンズの手間や制限から解放された日々は、想像以上に自由だったように思います。
ただひとつ感じるのは、「ずっとその状態が続くわけではない」ということです。視力は年齢や体の変化とともに変わっていくものなので、その点はあらかじめ理解しておく必要があります。
また、術後の一時的な不調についても、人によって感じ方が違います。乾燥や眩しさ、見え方の違和感など、最初の数週間は少し気になる場面があるかもしれません。
現在は当時よりも技術が進み、選択肢も増えています。角膜を削らずに矯正する方法や、眼内にレンズを入れる方法など、それぞれの特徴を比較しながら選べる時代です。
大切なのは、「自分に合った方法を見つけること」だと思います。生活スタイルや価値観、将来の見え方も含めて、納得できる選択をすること。そのために、情報を集めて、必要であれば専門の医師に相談するのが安心です。
あのときの自分は、「裸眼で過ごしたい」という気持ちを大切にして決断しました。そしてその選択は、自分にとって意味のあるものでした。
見えることが当たり前になった時間も、また見えにくさと向き合う今も、どちらも自分の一部です。
あのときの選択があったからこそ、得られた日々がありました。
これからも、そのときの自分に合う形を選びながら過ごしていきたいです。